ソーコ夜話①『元倉庫ならではのかっこよさ』

倉庫を格好いいと思っている人は、けっこう多い。

でも、ふつうの人は倉庫になんて入ったことがない。というより倉庫にはふつうの人は入れないと思っているし、じっさいそう易々と入ることはできない。そこで勝手に内部を想像して、妄想を膨らませたりする。倉庫の格好よさは、中が見えないからこそ成り立っている部分もけっこうあるのだ。

例えると、今みたいにネットが発達していなかったころの洋楽情報みたいな感じ。知りたいのにどこにいっても情報がないから悶々としたりする。で、知りたかったことがわかった時の達成感というか満足感。そういう時間も、好きな人にとっては楽しかったりするものなのだ。仮に実態とはかけ離れた誤情報が一人歩きしていたとしても、それはそれでおもしろいし。
だからネットで手軽に、しかも正確な情報が入手できる今、人を悶々とさせてくれる倉庫の閉鎖性は実は貴重だったりする。

倉庫を改装したお店や多目的に使える元倉庫もあるけれど、これは倉庫といってもリノベーションされた、いわば機能としてはデチューンされた施設だ。実際に稼働している倉庫が見たいというコアな倉庫好きはかえってフラストレーションが溜まるかもしれない。それでも、倉庫であんなことができたらいいな、とか、少しでも倉庫の空気に触れてみたいと考えている人にはうれしい選択肢だろう。

デチューンされたといっても倉庫の雰囲気はそこかしこに残っているし、そんななかでぐっとくるポイントとの出会いを見つけるのも新たな楽しみ方かもしれない。ふらりとブルースバーに入ったら好きだったバンドの元メンバーの弾き語りに遭遇したような、ってそれは例えがかっこよすぎか。

久保純一（ロジスティクス・トレンド）