ソーコ夜話⑧　『コンテナを通って倉庫の中へ』

当たり前だが、人が移動するための交通手段やルートと荷物のそれとは大きく異なる。人が旅行するのにトラックの荷台には乗れないし、貨物列車にも貨物機にも貨物船にも乗ることはできない。コンテナにも入れないし、倉庫や物流施設を経由するなんてことも絶対にない。ところが、コンテナを経て倉庫に至るという通常であれば荷物だけができることを、人が体験できる場所がある。ただし一瞬だけだが。

品川 WAREHOUSE Konan ENTRANCE は、その名の通り倉庫の入り口。一見しただけでは分かりづらいかもしれないが、この入り口の箱状の構造物は20フィートサイズのコンテナ。実際に使われていた海上輸送用のコンテナを倉庫ビルに設置して、入り口にしているのだ。

コンテナというと無機質で頑健なイメージがあるかもしれないが、こうしてあらためて見ると、かっちりとした四隅はむしろ生真面目な印象。ホワイトの塗装でシェイプが際立たち、全体がよりシャープに見える。そう、文字通り、コンテナってこんなにエッジが立っているのだ。そして蛍光灯を点けるとイエローのビニールカーテンを通して反射して、ぼんやりとしたコンテナ内を照らす。コンテナの非日常度は、ちょっとしたアレンジでこんなにも増すのだ。

コンテナを通って倉庫の中へなんて、荷物の疑似体験といったらいいすぎだろうか。否、倉庫を楽しむには想像力も必要なのです。倉庫という非日常空間への入り口がコンテナだなんて素敵。そう思いながらこの ENTRANCE を通ったあなたは、もう後戻りできません。

久保純一（ロジスティクストレンド）