ソーコ夜話④ 『この先、屋上ヘリポートにつき』
June 26, 2017
高い建物の屋上に上がったとき、人は二通りの反応を示す。恐怖と愉悦である。そして愉悦を感じる人の場合、その愉悦の何割かは想像に由来する。「ここから飛び立って空に舞い上がったらどんなにか気分がいいだろう」。飛び立つ瞬間を、実感をともなって想像できる場所。あえていいます、それが屋上の魅力なのだと。
なんとかと煙は高いところが好きという言葉に従えば筆者は“なんとか”に分類される人間なのだが、日常生活においてその高所欲を満足させるようなシチュエーションはそう多くない。高すぎず低すぎず、景色を遮るものがなく、空が拡がって、フラットで広い。
今回の写真は、そんな場所のひとつである 田町WAREHOUSE Kaigan 屋上1 に上る階段に掲げられた注意プレート。よく見ると飛行機の絵が描かれている。「飛行機に引火すると危険なので火気禁止」。そう読んだあなたはえらい。このプレートの先にあるのは、高すぎず低すぎず、景色を遮るものがなく、空が拡がって、フラットで広い。屋上ヘリポートなのだ。
実は都内で稼働中の屋上ヘリポートは、ほんのひとにぎり。都内初の民間ヘリポートとして開設されたこの場所も、今は使われていない。今はただ、轟音を響かせヘリコプター飛び立っていったその様を想像するのみ。火気禁止のプレートはそのよすがでもあり、ヘリコプターがふたたび飛び立つ日を待っているようでもある。
久保純一(ロジスティクス・トレンド)