ソーコ夜話㉕『弱い環より強く』

June 24, 2019

こんな言葉がある。

「鎖は、最も弱い環より強くはなれない」

鎖というものは、多くの環が連なってひとつの仕事を果たす。強度を均等にかけると、まっさきに切れるのは弱い環だ。鎖の強度とは、もっとも弱い環の強度にほかならない。先の言葉は、弱点の克服とともに、組織の結束や団結、力の底上げの大切さを説いている。

金属で製作した構造物の場合、その強度は溶接部分で決まることがある。場合によっては、一体構造よりも溶接した方が高い強度をだせることもある。強度を上げるため、溶接を加えることさえある。

写真は、鉄骨の溶接部分。ふだんは見ることのできない鉄筋コンクリートの内部は、おおむねこんな感じだ。撮影したのは 田町 Warehouse Market「Rebar」。ここでは鉄筋が、内と外を隔てる壁の代わりを果たしている。ブレインストーミングやワークショップなどインタラクティブな使われ方を想定したこの施設。内部からあふれ出る熱気や躍動があふれ出て、クリエイティビティが建物全体を満たしていく。意匠も機能も、そんなイメージで計画されている。

鉄筋コンクリートにおける溶接は、その強度を決める多くの要素の一つ。溶接が強度を決定づけるわけではないし、場合によっては溶接以外の方法で鉄筋を接合することもある。しかしなおざりに施工された溶接部分の強度が落ちるのは言うまでもないし、逆にしっかりと施工された溶接が強度に貢献するのも確かなことだ。

写真の鉄筋は、構造材ではない。あくまで仕切りとしてのみ機能しており、高い強度は要求されていない。だがコンクリートで満たされることのないこの鉄筋にも、ある種の「つよさ」が必要とされている。その大きさはどうやら、ここに集う人、ひとりひとりにかかっているようだ。

 

久保純一(ロジスティクス・トレンド)

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