ソーコ夜話⑬ 『コンクリート膨らみ、ロマン膨らむ』

May 15, 2018

 

 

今回の写真は、田町 AZITO の天井。コンクリートの地肌がインダストリアルな魅力を醸し出す、「格好いいとはこういうことさ」的空間だ。よく見るとこの天井、膨らんでいるではないか。

たしかに膨らんでいるが、いったいなぜだろう。聞けば天井パネルを取り外したらこうなっていた、という。錆の浮きやひび割れなどが見られないところからすると、築年数の経過によって膨らんできたのではなさそうだ。はじめから膨らんでいたのかもしれない。

建物の設計はすべて必然が決定するというセオリーに則れば、構造や強度、あるいはデザイン上の理由があるのかもしれない。そう思ったが、これも違うようだ。まあそうだろう。とすればこのコンクリートを打設した職人が何らかの意図をもって、という可能性が膨らんでくるが、どうだろうか。

コンクリートを打設する際、その工区に関わった職人が立ち会って、自分の手掛けた個所に不具合がないか見届けたり、作業を手伝ったりする習慣がある。「あいばん(合番・相番)」といい、古くから行われてきた。したがって何らかの意図をもって膨らませたとすれば、ここに立ち会った職人もすべて共謀していたとみるべきだろう。はたしてそんなことが可能だろうか。

エジプトのピラミッドの内部には建設作業員の落書きが残されており、世界最大の建造物の建設に参加した喜びや誇りを書いたものもあるという。この膨らみがそうだというわけではないし、その可能性は限りなく低いとは思うが。

この膨らみ、強度的に問題はない。何かが入っているわけでもない。謎は膨らむ一方である。なんだかわからないが膨らんでいた、でいいのかもしれない。それはそれで面白いし、むしろ想像が膨らむというものだ。

 

久保純一(ロジスティクス・トレンド)

 

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