ソーコ夜話⑪ 『常に備えあり』

March 15, 2018

 

常に備えあり、とはアメリカ沿岸警備隊のモットー。意味はそのままだが、一国の領海を警備する組織の標語としてもっともふさわしい言葉だろう。

さて今回の写真は、まさに「備えあり」だ。何ということのない非常ベル。建物には当たり前の設備だが、安全を保つには欠かすことのできないもの。つい忘れがちだが、決して忘れてはいけないというアンビバレンツな設備だ。

写真のベルがあるのは、倉庫とオフィスの複合ビル・WAREHOUSE 港南。その一室が2015年12月にリニューアルし、多目的空間として生まれ変わった 品川 ENTREPOT だ。アースカラーをベースにした落ち着いた内装に、プラントハンターが手掛けた植栽。窓辺に置かれた、ゆったりとした座り心地のソファ。窓からは、日の光が差し込む。

同ビルは築30年超。このベルも新築時からあるのだろうか。当時のナショナルのロゴマークを知る人も少なくなった。表面には錆が浮き、負ってきた任務の長さを感じさせる。調べてみると、デザインこそ違うが同じ型番の製品がまだ製造されているようだ。

このベルが鳴るようなことは、決して起きてはならない。しかし日常のある部分は、起きてはならないことに対する備えが、支えているのである。自分が役に立つことがないことを祈りつつ、いざというときに備える。ビルも倉庫も、「常に備えあり」という意識が支えている。このベルは、そのことを端的に表しているに過ぎないのだけれども。

 

久保純一(ロジスティクス・トレンド)

 

 

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